1. 天下り(あまくだり)
「天下り」とは、国家公務員や地方公務員、あるいは公職にあった幹部が退職後、在職中に関連の深かった独立行政法人、特殊法人、公益法人、または許認可権限を持つ民間企業に対して役員や顧問として再就職する慣行を指します。
官民の円滑な情報交換や専門知識の還元という名分が掲げられることもありますが、実際には「官民癒着」の温床となり、許認可の便宜供与や公共事業の随意契約、不透明な補助金配分などをもたらす構造的な弊害が長年にわたり批判されてきました。こうした世論を受け、2007年の国家公務員法改正では、各省庁による直接の再就職あっせんが原則禁止され、内閣府に設置された「官民人材交流センター」に窓口が一元化されるなど、制度的な是正措置が継続的に講じられています。
2. 思いやり予算(在日米軍駐留経費負担)
「思いやり予算」とは、日米地位協定の本来の規定(日本側は施設・区域を提供し、米軍の維持運営経費は原則として米軍側が負担する)を超えて、日本政府が自発的・特例的な配慮として支出してきた在日米軍駐留経費負担の通称です。
1978年、当時の防衛庁長官金丸信が「思いやりの立場で対処すべき」と発言したことに由来します。当初は日本人従業員の福利費の一部から始まりましたが、その後、光熱水料、訓練移転費、施設建設費などへと対象が拡大しました。安全保障上の同盟関係を安定維持するための不可欠なコストと位置づけられる一方で、国家財政が逼迫する中で支出の妥当性や見直しを求める議論が絶えず交わされています。近年では単なる駐留経費の肩代わりではなく、共同訓練や防衛基盤の強化を目的とした「同盟強靱化予算」としての位置づけへの転換が図られています。
3. 解散・総選挙(衆議院の解散)
衆議院の解散とは、衆議院議員の全任期(4年)が満了する前に、全議員の資格を一斉に失わせる内閣の決定行為であり、これに伴って行われる選挙を「総選挙」と呼びます。
日本国憲法において、解散の規定としては第69条の内閣不信任決議可決に伴う解散のほか、第7条の「天皇の国事行為に対する内閣の助言と承認」を根拠とする実質的な首相の自由裁量による解散(7条解散)が広く定着しています。首相が国民の信を問う最も強力な政治的権限であり、「伝家の宝刀」とも称されます。政策上の重大な対立が生じた際や、政権基盤を強固にする好機を見定めて行われますが、大義名分の有無や選挙費用の莫大さ、任期途中の政治空白をめぐる議論が常に伴います。
4. 行政監察(ぎょうせいかんさつ)
行政監察とは、総務省に設置された行政評価局などが中心となり、各府省庁の業務運営、法執行状況、補助金の使途などを客観的に調査・評価し、制度の改善や無駄の排除を勧告する仕組みです。
中央省庁の縦割り行政の弊害を打破し、国民本位の効率的で透明性の高い行政を実現するための「行政内部のセルフチェック機構」として極めて重要な役割を果たしています。定期的な監察によって、形骸化した制度の改廃や、重複した業務プロセスの簡素化が推進されています。
5. 行政訴訟(ぎょうせいそしょう)
行政訴訟とは、国や地方自治体などの行政庁が行った処分(行政処分)や公権力の行使に違法性があるとして、国民がその取消しや無効確認、あるいは違法な不作為の是正を求めて裁判所に提起する訴訟手続きです。
個人の権利利益の救済と、行政運営の法適合性を司法判断によって担保することを目的としています。かつては訴訟要件が厳格すぎると批判されていましたが、2004年の行政事件訴訟法改正により、原告適格の拡大や仮の救済手段(執行停止要件の緩和)の充実が図られ、市民が行政の不当な判断に対して異議を申し立てやすい環境が整備されました。
6. くら替え出馬(鞍替え出馬)
「くら替え出馬」とは、現職の公職(例えば参議院議員や地方自治体の首長、地方議員など)にある者が、その任期の途中で辞職し、別の選挙(衆議院議員選挙や知事選挙など)に立候補することを指します。
より強い政治的影響力や政策実行力を持つポジションを目指す個人的なキャリアアップや、所属政党の議席最大化戦略の一環として行われます。しかし、元の選挙で投票してくれた有権者への信義則や、辞職に伴う補欠選挙に要する公費負担の観点から、批判の対象となることも少なくありません。
7. 暫定税率(ざんていぜいりつ)
暫定税率とは、特定の政策目的や財政上の緊急避難的措置として、本来の法律で定められた本則税率に上乗せして一時的に課される税率のことです。
代表的な例がガソリン税(揮発油税および地方揮発油税)です。1970年代の高度経済成長期に道路特定財源として導入されて以来、道路整備の財源不足を理由に「暫定」と名付けられながらも数十年にわたり延長が繰り返されてきました。2008年には期限切れによる一時的な税率失効と給油所の混乱が社会問題となり、その後の税制改革で道路特定財源の一般財源化が行われるなど、日本の税制論議における大きな画期となりました。
8. 首相官邸(しゅしょうかんてい)
首相官邸とは、内閣総理大臣が日常の執務を行い、閣議が開催されるとともに、内閣官房をはじめとする政府の中枢機関が集約された施設です。
2001年の中央省庁再編以降、政策決定における「官邸主導(政治主導)」が強く打ち出され、首相官邸の機能は飛躍的に強化されました。緊急事態対応のための危機管理センターや、安全保障、経済財政、科学技術政策の司令塔となる各種会議が官邸内に整備され、国家の最重要方針を迅速に決定・執行する中枢機関として稼働しています。
9. 首相補佐官(内閣総理大臣補佐官)
首相補佐官とは、内閣総理大臣の命を受け、国家の重要政策に関して助言や立案を補佐する特別職の国家公務員です(定員は最大5名以内)。
各省庁の利害や官僚機構の縦割りに縛られず、首相直属のスタッフとして機動的に動けるため、外交、安全保障、経済再生、少子化対策など特定の重点課題においてリーダーシップを発揮します。民間人や国会議員から任命され、官邸機能の強化に不可欠なブレーンとして機能しています。
10. 新党(しんとう)
政治における新党とは、既存の政党の分裂、離党、あるいは理念を共有する政治勢力の結集によって新たに結成される政党を指します。
政党助成法に基づく政党要件(所属国会議員5名以上、または直近の国政選挙での得票率2%以上)を満たすことで、国からの政党交付金の受給資格や法的な政党としての優遇措置を得ることができます。政治の閉塞感を打破する契機となる一方で、選挙互助会的な離合集散を繰り返すケースもあり、政党政治の安定性と民意の反映のあり方が常に問われています。